自然からのおたより
シデコブシ
コブシは日本全土に分布するがシデコブシは岐阜、愛知、三重の東海三県に限定されるため東海丘陵要素植物と呼ばれており、準絶滅危惧種に指定されている日本固有種である。
コブシの花弁が6枚に対し本種は9~25枚で紙垂(しで)のように細長く垂れ下がるのでシデコブシと命名されている。本種はコブシと違って芳香が無いため一斉に開花させ枝全体を純白の素地に薄紅色の帯を這わせた正に春到来と言った花色で飾り立て送粉虫を誘引するが、雌性期と雄性期の時期をずらせて自家受粉を防いでいる。
開花時にはまだ眠りから覚めない冬芽が見られ冬の寒さを防ぐためにびっしり毛が生えており大切に守られてきたのかが見て取れる。冬芽を破って現れる花弁は春の陽光に相応しい薄紅色だが、開き切ると白に代わり名残の紅色が葉裏にあたかも筆を走らせたかの様なにじみが浮き出て何とも形容しがたい美しさがあり、出会いの際には艱難辛苦を経て生き延びてきた苦労を労って「頑張って」と声をかけて頂きたいものである。
冬芽
虫を呼ぶための装い
雄性期
雌性期
結実期
文・写真:山口康裕
ジオパークよもやま話
大室山(4)4ヵ所から膨大な溶岩「先原三里」を出現させる
東方向に向かった溶岩は払火山で二分されたが、北側に富戸の溶岩扇状地、南側に10キロメートルにおよぶ城ヶ崎海岸を形成している。岩室山は現在、山全体が伊豆シャボテン動物公園となっている。
高圧鉄塔のある「森山」からは、溶岩が南東方向に向かい、伊豆急行「伊豆高原駅」「八幡野港」まで3キロメートルの地域を流れ下った。
南流した溶岩は再び対島川を高くせき止め、池が拡大した。溶岩の高さは池小学校のレベルくらいであるが、溶岩の底の吸い込みがあり、水面は龍渓院の境内くらいかもしれない。
溶岩流Ⅳは池側山麓の大鳥居から続く登山道の途中で見られる。ススキに埋もれて見えにくいが、山焼きの後には確認できる。山頂火口にたまった溶岩流の一部が染み出したという説もあるが、南壁の一部の可能性もある。
山焼き直後にのみ山肌を見せる大室山はまだ秘密が隠されているかもしれない。<続く>
文:斉藤俊仁



大室山にはジオテラスの以下のジオツアーでお客様を案内しています。
A-1 大室山コース
A-2 大室山・さくらの里コース