シデコブシ

コブシは日本全土に分布するがシデコブシは岐阜、愛知、三重の東海三県に限定されるため東海丘陵要素植物と呼ばれており、準絶滅危惧種に指定されている日本固有種である。
コブシの花弁が6枚に対し本種は9~25枚で紙垂(しで)のように細長く垂れ下がるのでシデコブシと命名されている。本種はコブシと違って芳香が無いため一斉に開花させ枝全体を純白の素地に薄紅色の帯を這わせた正に春到来と言った花色で飾り立て送粉虫を誘引するが、雌性期と雄性期の時期をずらせて自家受粉を防いでいる。
開花時にはまだ眠りから覚めない冬芽が見られ冬の寒さを防ぐためにびっしり毛が生えており大切に守られてきたのかが見て取れる。冬芽を破って現れる花弁は春の陽光に相応しい薄紅色だが、開き切ると白に代わり名残の紅色が葉裏にあたかも筆を走らせたかの様なにじみが浮き出て何とも形容しがたい美しさがあり、出会いの際には艱難辛苦を経て生き延びてきた苦労を労って「頑張って」と声をかけて頂きたいものである。

      冬芽

   虫を呼ぶための装い

雄性期

     雌性期

     結実期

 

 

 

 

 

文・写真:山口康裕

 

 

 

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