ヨモギの来た道

秋はキクの季節です。ヨモギ(蓬)もキク科で花を咲かせます。早春のヨモギは草餅やてんぷらなどの楽しみ方はいろいろです。また成長した葉はお灸で使うもぐさに利用されますが、その花は地味で目立たなく、道端では邪魔者扱いされています。
キク科の花の特徴は小花がたくさん集まり、それらが一個の花に見えることです。タンポポ、ヨメナ、ヨモギどれも小さい花の集まりですが、花の形はいろいろです。タンポポは舌状花のみ、ヨメナは舌状花と筒状花、ヨモギは筒状花のみの集まりです。タンポポとヨメナは虫媒花ですから光を受けて上を向き、ポリネーターに存在をアピールしています。ところが、ヨモギの花は筒状花で下を向いて咲いています。キク科の中ではヨモギだけが風媒花なのです。ですから目立つ必要はなく、花粉を運んでもらうべく風を待ってうつむいています。この小さな花は筒状花の中心部に両性花が、周囲に雌花という構造で、どちらも結実するとのことです。
5億年前に植物が上陸し、その後、被子植物の発生に伴い昆虫との共生が始まり、植物は風媒花から虫媒花へ進化しました。特にキク科植物は最も進化したグループと言われています。その中でもヨモギは虫媒花から再び風媒花へと転換したものとのこと。それぞれの植物のそれぞれの道、人生にも似ているように思います。(K.N)

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