大室山浅間神社の祭神は? 芹沢安正
「あれあれ、急に曇ってきたね。富士山も見えなくなったよ。」
「しまった!富士山がきれいだねって、みんなで言ったからだよ!」
それは、大室山にはこんな言い伝えがあるからです。
古事記によると、ある時に天孫ニニギノミコトがとても美しい娘を見つけました。オオヤマズミ神の娘コノハナサクヤヒメです。早速、ニニギノミコトはオオヤマズミ神にコノハナサクヤヒメが欲しいと言いに行きました。オオヤマズミ神は姉のイワナガヒメと二人一緒ならあげるよということで、その夜二人をニニギのもとにおくりました。しかし、見栄えの悪いイワナガヒメはすぐさま返されたのです。
姉と妹をセットで天孫ニニギノミコトに嫁がせたオオヤマズミ神の思いはこうだったのでしょう。
姉イワナガヒメはその名の通り見栄えは悪いがその命は岩のように長い。しかし、妹のコノハナサクヤヒメは桜の花のように見栄えは良いがその命は非常に短い。だから、姉妹をセットにして天孫ニニギノミコトに嫁がせれば子孫繁栄間違いなしと・・・。
見栄えの良いコノハナサクヤヒメは富士山に、見栄えの悪いイワナガヒメは大室山にそれぞれ祀られました。
それからというもの、大室山で富士山を褒めるとイワナガヒメが妹のコノハナサクヤヒメに嫉妬して富士山を隠してしまうということです。
ところが、大室山浅間神社の古い棟札には「村民の言い伝えによると、大室山は大昔に地下より湧き出た霊峰で、何時のことかわからないが富士浅間の神を勧請して祀った」とあります。ということは、富士山と同じコノハナサクヤヒメを祀ったことになります。
では、どうして今はイワナガヒメなんでしょうか。
皆さんご存じの三嶋大社の祭神は現在コトシロヌシとオオヤマズミです。明治以前はオオヤマズミでした。この三嶋大社は富士山と大室山を結ぶ線上にあります。父のオオヤマズミを中心にして片方の富士山に妹のコノハナサクヤヒメ、もう一方の大室山に姉のイワナガヒメという構図になります。
天孫ニニギとその子孫に寿命ができたのは見栄えは良いが儚い命のコノハナサクヤヒメだけを選んだからだというのです。
やはり、私たちに大切なのは右か左か片方を選ぶのではなく、人間的美しさを求めると共に健康づくりにも配慮した人生のバランスなんでしょうね。









