本種はキク科ツワブキ属の植物で、福島県以南の主に海岸線の岩場そして海沿いの丘陵地でも見られる。11月から1月にかけて城ヶ崎海岸を散策すると一際目立つ黄色の花が本種である。
葉はフキとそっくりであるが光沢と厚みがあり海岸線の過酷な環境に耐えられるようになっている。また大きな違いはフキの茎が中空に対して本種は髄で満たされている点である。花はキク科特有の頭花の外周を舌状花が並び野菊よりも大型なので見応えがある。キク科の舌状花は全て雌花で中央の頭花が両性花であるが、まるでアマゾネス軍団に守られているかのようである。花を良く見ると多数の茶色の筒が飛び出しており、これは雄蕊が合着したもので中に雌蕊を包み込んでいる。雄蕊の花粉が放出し終えた後に中から雌蕊のカールした二裂の柱頭が顔を出し雌性期となるが、このシステムは集約雄蕊と呼ばれ、自家受粉を避ける巧みな戦略を長い進化の過程で獲得したのであろう。本種に遭遇の際に筒の上から愛らしいカールの柱頭が見えたら彼らの進化の偉業を思い起こしエールを送っていただきたいものである。
余談であるが本種には葉茎に抗炎症作用や抗菌作用の成分があるためCMで有名な痔の薬には本種のツワブキエキスが用いられている。もしお使いならば感謝を忘れずに。
(山口康裕)
見事な群落
筒状花が目立つ
筒状の総苞
集約雄蕊から延びる柱頭
撮影地:城ヶ崎海岸